「会長」



私の手を握っている会長の手。

その手を私は両手で握り返した。



「ありがとうございます」



ありがとう、の言葉には偽りもなにもない。

心からの言葉だった。



「下駄箱にノートの切れ端が置いてあったんです」



生徒手帳に挟んだ、ノートの切れ端。

『俺が守るから』と書かれていた。



「会長が置いたんですよね?」

「……」



何も言わない会長。

その無言は私の問いに対して、肯定しているものだととらえた。


会長の優しいところ。

不器用なところ。


いろんな会長の姿を見ることが出来て、心温まる自分がいる。



「嬉しかったんです。……ノートの切れ端が、私を守ってくれたんです」



素直な気持ちを会長に伝える。

気持ちを伝えるって、くすぐったくて、ソワソワする。

会長も同じ気持ちなのだろうか。



「……それならよかった」



少し恥ずかしそうに私に笑顔を向けてくれる。


その笑顔は反則だ。

思わず、抱きつきたくなってしまうような、そんな笑顔。


抱きついたらダメだ。

私は暴走しないように、話題を変えた。