家に着いたのは、星空が輝きだす頃だった。

会長が鞄から鍵を取り出して、玄関を開ける。


『ただいま』も言わずに、家の中に入る私たち。

玄関にはローファーが1足、きれいに揃えられていた。


……夏樹ちゃん、もう家に居るんだ。

会長とも話せていない姿を夏樹ちゃんに見られるのは気まずい。

気まずいし、申し訳ない。


そう思いながら、リビングに入る。



「あ、おかえりーっ」



ソファに座っている夏樹ちゃんが顔を出す。

いつもだったら、その行動が可愛くて仕方なくて笑顔があふれるのに。

今日はぎこちない笑顔しかできない。



「ただいま」

「た、ただいま……」



会長は鞄をソファ横に置いて、洗面所に向かった。

その後姿を、ぼーっと眺める私。

そんな私を不思議に思ったのか、夏樹ちゃんがソファから降りて、私に近づいた。



「今日、お兄ちゃんと一緒に帰ってきたの?」

「うん……」



夏樹ちゃんは少し考えているような素振りをする。

余裕のない私は自分のことで精一杯で、夏樹ちゃんの思っていることまで感じるとることができなかった。