「こいつは今、俺の家にいるから」



そして再び歩き出す。


理樹くんの言葉にならない声が聞こえた。


……驚くのも無理はないよね。


だって、私、誰にも言ってなかったから。

私と同じく、会長も誰にも言っていなかったんだと思う。

多分、私が『同居していることは秘密にして欲しい』と言ったから。

会長は今まで、黙ってくれていたんだ。

その会長の心遣いには感謝しかない。


私は、会長に腕をつかまれたまま、半歩後ろを歩く。


どちらも、口を開かない。

開いてはいけないような、そんな空気の圧さえ感じる。


私たちは、何も話すことなく、歩いていた。