「先行くから」



そう行って、がちゃん、と玄関の扉が閉まる音が聞こえた。


え、もう行ったの!?

いくらなんでも早すぎません!?

今、9時半だよ!?


なんとなく心の風船がしぼんだ感じがする。


私、会長を怒らせちゃったかなぁ。


しょんぼりしながら、リビングのテレビを消す。

階段を上って自分の部屋に向かうと、壁に掛けてあるワンピースを見つめた。


夏樹ちゃん……。

力を貸してね。


祈ってから、私は借りたメイク道具を取り出して丁寧にメイクをしていく。


アイライン、引き過ぎないようにしないと。

グロスも塗り過ぎないように薄っすらと。


緊張で手が震えっぱなしだったけど、なんとか完成した。