「北澤」



施錠を終えた会長が私の名前を呼ぶ。



「この空き教室は2人だけの秘密な?」



いたずらっぽく笑う会長にキュンとしてしまう。

それに、2人だけの秘密って……。



「生徒会の資料室だけど、理樹と宮野も知らない場所なんだ」

「そうなんですか?」

「だから、2人だけの秘密な?」



頷く私に満足げな表情の会長。


2人だけの秘密って、なんだかソワソワする。

会長だけの秘密だった場所を、私にも教えてくれた。


特別感。


それが嬉しくて、思わず頬が緩む。



「じゃ。またな」



会長が手を上げて、教室へ戻っていく。

その後姿を見つめながら再び祈った。


会長が振り向いてくれますように、って。

私の“好き”が、いつか届けられますように、って。


会長の姿が見えなくなってから、私も教室に戻った。


……そういえば。

なんで会長は、生徒会室から私を連れ出したんだろう。

空き教室の存在を教えるため?


なんか違う気がする。

会長に連れ出される前に、理樹くんに頭を撫でられていた。

それでヤキモチ妬いてくれていたらいいな、とか思ってしまう私。


こんな自分は初めてで、戸惑うけれど。

そんな自分も嫌いじゃない。