コンコン。
階段を一段上るのも、ものすごく勇気がいったけど、ノックはさらに勇気が必要だった。
息を飲んでしばらく待つ。
でも、返事はない。
「翔ちゃん、開けるよ?」
思いきってそっとドアを開けた。
入っても、いいのかな?
ドアの隙間から部屋を見渡した。
小物や壁紙は知らないものだけど、でも見覚えのある家具もちゃんと残っていてすごく懐かしかった。
当たり前だけど、あの頃みたいに、おもちゃやマンガで散らかってはいない。
無駄のないすっきりとした部屋はどこか私を拒んでいるみたいで、このまま戻ろうかとも思った。
でも、机に顔を伏せて眠ってる翔ちゃんの顔が目に留まって、吸い寄せられるように部屋に足を踏み入れてしまった。