2034年 4月30日 彗星 処刑場にて―

私は目の前で磔にされている翔太を助けようと、女王に叫んだ。
「お止め下さい、女王様!」
「何故だ?こいつは、私に逆らったのだぞ死んでもおか
しくなどない。それとも、『 お前が』死ぬか?」
「っ……。」
私はその言葉に何も言い返せなくなった。翔太は、心の中に秘めとけばいいものを、女王の言いなりになるなど馬鹿馬鹿しいと言いに行ってしまったのだ。
「私が、、、私が殺されます!」
「樹!やめろ!」
彼女の名前は、雨屋樹私たちの3年後輩である。本当なら、今は中学校に通って青い果実の時代を生きていくはずだったのに、またこの子達も飛ばされた被害者の内の一人である。
「ごめんね蓮。私もうここにいたくないんだ。」
樹は、涙を堪えながら暗ノ蓮に訴えた。
蓮は目の前にいる樹に対して叫びかけていた。
「お前が死ぬ必要はない!女王を殺ればいい話だろ?なんで、お前が死ぬんだよ!だ、だって―。」
「もう無理なの!人を傷付けたくないのを知ってるでしょ?こんな生活のせいで私の精神は殺されているも同然なのよ!」
「い、、、つき?な、なんで?ぼ、、、くと、僕と居ればいいじゃないか。」
「やっぱり、蓮は変わってないね。私は、蓮が好きだった。でもね、もう限界なんだ。ということじゃダメか
な?女王様。」
「それは、面白い条件だが死にたくないやつを殺す方が私は性にあっている。」
「私は、死にたいとは言っていません。ただこの惑星に居たくないだけです。それではどうでしょうか?」
「それなら納得だな。では、これを返そう。」
「うっ…………。」
「翔太!大丈夫か?」
「あ、ああ大丈夫だ。」
翔太の「それより樹は?」と言う声と女王の、「今すぐ《N.15》を殺せ!」という声が綺麗に重なり、樹のからだは重力に従って落ちていった。それを蓮は抱きとめて揺さぶった。
「い……つき?嘘……だろ?ジョークなんだろ?なぁ、何か言ってくれよ。死んでるなんてあり得るわけ無いよな?何か言ってくれよ!なんで、何で樹が……。う、うわあああああぁぁあああああぁ。」
蓮は、樹が死んだ事に、悔しさと苦しさが混じった叫び声を響かせた。
「……蓮……ごめんな。」
その言葉が悪かったのだろう、蓮は私たちの方へ、鬼の形相で襲いかかってきた。
「お前らの、お前らのせいだ!お前らのせいで、樹は!
少しの間だけ放っておいてくれ。しばらく1人にしてくれ。」
そう言って、蓮は自分の元居た牢獄へと入って行った。
「あ、あぁわかった。」
本当はもっと言いたいことがあったのだが、私の口から出てきたのは、その言葉だけであった。