* 4年前


2030年 4月1日 都内某所―


事の発端はこの日だった気がする。
さっきは言わなかったが私の名前は《田中新一》下の名前が某高校生探偵の名前と同じなのは許して欲しい。
この日私は翔太と共に飛行機に乗っていた。今日からパリに1ヶ月間雨宮大学という短大の卒業記念旅行に行くのである。
「まーた、謎の顔をしてるよ。」
翔太が私にそう言ってきて、少しイラッとしたので、「うるさい。」と言って「そもそもお前は女か?」と、ツッコもうとしたところ、翔太が「へいへい。」と言ってきたのでそれ以降一言も喋らなくなった。
重々しい空気の中、翔太が沈黙を破った。
「そういえば、パリに行ったら何したいんだ?」
そんな質問に笑ってしまいながらもイタズラっぽく答えた。
「なんだと思う?」
「んぁ?知らねぇよ。」
翔太が不機嫌そうに答えてきたので私は、もっとイタズラっぽく答えた。
「当たったら教えてやるよ。」
「それ意味あんのか?」
つべこべ言いながら真剣に考える翔太を私は隣で観察していた。翔太の顔は世間で言う『イケメン』とい
う部類に入るようだった。実際、彼は女性が振り向くのも納得で、男の私でも見とれてしまう程整っているが、性格(?)は、どちらかと言うと『クズ』だと言ってもいい方である。とにかく女遊びが激しい。今まで問題になった数はもう覚えてなどいない。
そんな事を考えていると、翔太が閃いたように私に聞いてきた。
「世界遺産巡りか?」
いきなり当てられ動揺した。私としては、そんな一瞬で当てられるのは、不快だったが事実なので認めることにした。
「正解だよ。」
そんな風に話していると、いきなり謎の光に包まれ、私はその場で気を失った。