２０３４年 １０月３１日 時の狭間にて―
私たちは、今どこに居るかも分からずに散策していた。
｢ここ何処だろ。なぁ亜紀わかるか？｣
｢わかんない、どこなの？｣
そんな会話の中いきなり亜紀のうめき声がした。
｢ﾞあ、ﾞう｣
｢えっ！亜紀？｣
｢しん……いち……さん、逃げて。｣
亜紀は、肩を上下させながら、呼吸をしていた。よく見ると、背中からお腹にかけて、何かが貫通している。
｢亜紀……それ……。｣
｢あはは……、きっとバチが当たったんだ。だって皆は、死んだのに私たちだけ生きてるなんて。｣
そう言った後、亜紀はもう一度自嘲的な笑みを浮かべた。
｢なんでだろ……、もう痛くなくなって来たな。新一さん、今までありがとう。私はもう行かないと。｣
そう言うと亜紀は、静かに瞼を閉じた。
｢亜紀……？おい亜紀！｣
私が、叫んでいるところにいきなり誰か他なものの声
が聞こえ、振り返って見るとそこには化け物と言うのにふさわしい者が居た。
｢恋人が目の前で死んでゆく人の表情を見るのは楽し
いのぉ。どうだ新一、私を倒した事を後悔したであろう。｣
｢お前……。だれ……だ？｣
(いや、そんなはずない私はこれを誰と言えるほど知らない訳では無いはずだ。)
そんな中、化け物は私に対して語りかけて来た。それも、とても懐かしい耳を劈くような声だ。
｢おぉ、忘れたか。まぁあんなに幸せな日々過ごしていれば、過去の嫌な思い出など忘れて当然。と言ったところか？｣
そんな話を聞いてやっと思い出した。
｢お前、まさか女王か？｣
｢いや、次期女王だ。お前らの間に生まれた華愛良がそうだ。｣
｢私の娘が次期女王だ？ふざけた話を吐かすな。｣
｢お前、もう死にたいか？私はお前ともう少し話していたいからな。静かに話を聞け。｣
そう言って亜紀の体を貫いたであろう、血の色をした触手を出てきた。
｢ひっ！｣
｢残念だがこれで貫かれたら終わりだ。亜紀も死んだであろう。｣
｢わ、私が……私が亜紀と、付き合わなければ。｣
｢後悔しても遅かろう。残念だったな。てことで、話したいことはもう無い。お前には死んでもらう……！｣
気がつくと、私は次期女王の体を貫いていた。体も、いきなりの事に固まっている。
｢お……まえ……私を殺した結末がどうなるかわかっているな？｣
｢今すぐ私の体を貫いている男を殺せ！｣
｢はっ。わかっていたさ。ただな、お前だけは殺しておきたかったんだ。恋人の、仇って、やつさ。｣
｢なぜ貫かれてなお、そこまで喋れるんだ？｣
｢さて、どうしてでしょうか。まぁご想像にお任せするさ。｣
｢っ……！｣
｢それより、頬が紅くなってるぞ、次期女王。｣
｢も、もうやめろ！もういい！喋るな。｣
｢どうしてだよ。最後にしゃべりたかったんだろ？なら、いいじゃん。｣
｢こんな、こんなつもりでは。元々、亜紀を、殺す、だけの、計画が、台無し、だ。｣
｢おい大丈夫か？次期女王？｣
｢私の本当の名前はドルシーさ。ただ、ただ新一が、好きだっただけの。ただの化け物。話してくれて、ありがとう！｣
｢ドルシー……か。そんな、素敵な名前を付けてもらって居たのか。最後の最後で君の名前が聞けて良かった。｣
(でもね、ドルシー、私もそろそろ死ぬな。来世では、沢山幸せになってくれ。)
そう願いながら私は、眠りについた。
