灯が死んだことは、葵のせいではないということくらい、宗司にはわかっていた。


だが、そうだからと言って簡単に割り切れるわけではない。


何も考えていないように見えて、色んな人に依存しなければ自分を保てない程に追い込まれているのが、今の宗司だった。


心が壊れないように、それを支え続けたのは蘭子だったが、沙也香を見て、蘭子は不安を覚えていた。


「……確かに、ここは両国から侵入する為の最重要地点みたいだな。おっと、二人ともキョロキョロするなよ? バレちまうからな」


そんな中で、ぼんやりした様子でおにぎりを食べる宗司が妙なことを呟いた。


その言葉通り、今、何が起こっているのかを自分の目で確かめたいと二人は思ったが、宗司に従って食べ物を口へと運んだ。


鬼か、敵か、なにが近付いているのかわからない中で食事を続けるというのは精神的に堪える。


それでも、蘭子は宗司を信じていたから無防備でいられたし、沙也香は警戒心を緩めなかったが、ここを守っている彼女ならば、それはごく自然なことだった。


しばらくして、宗司達の背後でジャリッという足音が聞こえた。


「宗司くんに蘭子ちゃん? 何してるのこんなところで」