「へぇ。噂の『百器丸』って宗司くんだったんだね。もっといかつい人を想像してたな。ごつい、ゴリラみたいな感じの人を」


再び、浅草橋駅の近くのビルの上に移動し、屋上の縁に腰掛けながら、三人は話をしていた。


「いやいや、なんだよその『百器丸』って。俺ってそんなダセェ名前で呼ばれてたりするの?」


「ダセェのか? 蘭子は好きだぞ! かっこいい!」


コンビニで買ったおにぎりやサンドイッチを食べながら、沙也香から聞く自分の評価に宗司は照れていた。


そして、思春期の男子なら気になるのは、他の人もそんな二つ名で呼ばれているのかということである。


「ちなみに、他にそういう名前で呼ばれてる人っていんの?」


「んー、私が聞いた話だと、篠田さんが『暴虐の拳帝』、南軍の結城昴が『雷神』、あとは……最近見ないけど、『紅い閃光』の北条葵ってやつくらいかな。知ってるのだと」


沙也香の話を聞き、小さく「ふーん」と呟いた宗司。


他の人の二つ名を聞いて、特別自分のだけがダサいというわけではないことを知り、安心した様子で次のおにぎりに手を伸ばした。


「紅い閃光ね。大切な人を守れなかった野郎が、随分大層な呼ばれ方してんじゃねぇの」


ボソッとそう呟いた宗司に、沙也香は不思議そうに首を傾げて視線を向けた。