結局、宗司もわからないのか。


別に両国に鬼が出ようが、俺には何の関係もないんだけどな。


「まあ、本当にいたら気にはなるけどさ。ただの噂話だろ? 信憑性に欠けるだろ、そんなの」


「うわぁ……現実的ぃ。もっと夢を持とうぜ。ファンタジックな世界を妄想するのも楽しいもんだぜ?」


こうやって、宗司と話していると元の話を忘れるくらいに脱線して行くから、話をはぐらかしたい時はありがたい。


「そういう話、男の子って好きだよね。そんなのいるわけないでしょ」


バカにしたようにため息をついて首を横に振る灯。


こうして、なんでもないような話をしながら時間が過ぎていく。


こんな毎日がいつまでも続くと思っていたけど、俺はもっと宗司の話を真面目に聞いておけば良かったのかもしれない。


この時はまだ、俺達の身に何が起きるかなんてわかっていなかったから。


母さんの命日……高山真治という人物からの招待状。


全ては、俺が生まれるよりもずっと前から始まっていたことだったんだ。


あの日……母さんが死んだ日。


もしも母さんが死ななければ、この運命は変わっていたのかもしれない。


今日、終わりが始まる。