俺だって、考えなかったわけじゃない。


灯が化け物になってしまうなら、その前にキングを破壊してこの街から逃がせば良いって。


だけどそれは、その軍の人達のレベルを半減させてしまうことで、かつて南軍で結城さんと敵対した時のようなことが起こるんじゃないかと、口には出せなかった。


「今、南軍は落ち着いている。葵が戦ってくれたおかげで、派閥の垣根を超えてひとつになることが出来たんだ。だから、遠慮しなくても良い。後のことは俺達に任せろ。皆揃って、この街を終わらせてやるさ」


結城さんが、グッと親指を立てて俺に笑顔を向けてくれた。


姉さんの時とは違う。


灯をこの街から逃がすことに、これほどの人が協力してくれるなんて。


「んじゃあ、最後は俺に見送らせてくれよ。この街に一緒に入った、幼馴染みだけで行こうぜ。蘭子、待ってられるよな?」


少し寂しそうに……だけどそれを感じさせないような笑顔で俺達の前に歩み出た宗司。


蘭子は小さく頷いて、俺達を見ていた。


「宗司……なんて言ったら良いか」


「気にすんなっての。この街にはまだクソ親父がいやがるからな。あいつをぶん殴るって目標があるんだ俺は。だからお前らは気にすんな」