「では次は指輪の交換だ。ジュエリーショップからパクって……いや、頂いてきたこの指輪を新郎から新婦に」


そう言って神谷は、指輪を俺に渡したけど……今、パクって来たって言ったよな?


まあ、この街じゃ、身に付けるものは店や民家から拝借してるから、それも仕方ないか。


神谷から指輪を受け取って、灯の左手を取る。


そして、その薬指にそっと指輪をはめた。


「次は新婦の番だ。これを新郎に」


同じように指輪を灯に渡して、灯が俺の左手を取って薬指にはめた。


「うむ。ここには誓約書も何もない。お前達を祝福しようと集まったやつらの心に、お前達の誓いは刻まれるのだ。てなわけで、最後に誓いのキスをして、新郎の挨拶で終わりにするぞ。ほれ、さっさとキスをしろ」


牧師役なら最後までそれっぽくやってくれよ。


国語辞典を持ってるだけで笑ってしまいそうになるのに。


「えっと……どうやるんだ? このヴェールを上げないとか」


打ち合わせも何もしていないのと、緊張から手が震えて。


ヴェールを頭の上に置いて、俺は灯を見詰めた。


「なんか、照れるね」


「そ、そうだな。いきなりだもんな」


小さく、そう話した後、俺は心臓が張り裂けそうな緊張感の中で、灯と唇を重ねた。