あまりにも突然過ぎて、感情が追い付いていないから、実感も何もない。


だけど、隣に立つ灯が恥ずかしそうに俺を見て。


「ごめんね葵。お父さんが強引で。私はまだ早いって言ったんだけど……迷惑だよね」


「確かに驚いたし、正直何が起こってるか全然わからないけど……迷惑じゃないさ。時期が早くなっただけだろ? 俺が灯を好きなことは変わらない」


そうさ、その気持ちに嘘はない。


灯の嬉しそうな顔を見て、俺と灯は神谷の前へと進んだ。


「うおっほん! 細かい段取りはカットだ。えーっと、北条葵。お前は今、名鳥灯を妻とし、神の導きにより夫婦となろうとしている。病める時も健やかなる時も、その命ある限り、真心を持って尽くすことを誓いマスカー?」


なんで最後が片言になったというツッコミを入れたいけど、そこは我慢して。


「は、はい。誓います」


「うおっほん! では名鳥灯。お前は今、北条葵を夫とし、神の導きにより夫婦となろうとしている。病める時も健やかなる時も、その命ある限り、真心を持って尽くすことを誓いマスカー?」


神谷の言葉の後、灯はチラリと俺を見て、クスッと笑った後に前を向いて。


「はい。誓います」


そう言った灯の横顔は、とても晴れやかだった。