……何やってんだこいつ。


と言いたいところだけど、妙に似合っているのが腹が立つな。


「緊張するな葵。俺達の誰も、正式な段取りなんて知らん。全部適当だが……お前達を祝福する気持ちはある。だからお前はただ、新婦に愛を……」


と、神谷が話している途中で、室内に音楽が鳴り始める。


本当に段取りが適当なんだなと思って苦笑いを浮かべたけれど、ドアが開いて現れた父さんと、ウェディングドレスを着た灯を見て、俺はその姿に目を奪われた。


「ヒューヒュー! 綺麗だぜ灯!」


「どうした名鳥! 泣いてるんじゃないぜ!」


ゆっくりとこちらに向かって歩く父さんと灯に、野次とも思える言葉が飛ぶ。


恥ずかしそうな灯を見ていると、しばらくは安定しているのだということがわかった。


黒井が言っていた、あと一回化け物になったら元に戻らないというのも、この調子なら大丈夫なのかもしれないな。


バージンロードを歩き、俺の前までやって来た父さんと灯。


「葵……これからは灯を頼むぞ。俺じゃなく、お前が幸せにしてやってくれ」


涙ぐんでそう言った父さんが、俺の背中を叩いて灯の隣へと押した。