高山真治の言う通り、光の壁に到着すると、そこに人ひとりが通れるくらいの穴を空けて、俺達はその穴を通って北軍に入った。


聖戦の時とは違い、閑散としているというか……人の姿は見えない。


先に帰った拓真と舞桜は、両国から戻ったのかな。


俺達と一緒に来たら早かったのに。


「葵、葵。きいてもいいか?」


上野駅の前を歩いていると、蘭子が服の袖を引っ張ってそう尋ねた。


「なんだよ改まって。俺が答えられることなら何でも教えるぞ」


「葵は灯と結婚するのか? それくらい好きなのか?」


あまりにも突然な蘭子の質問に、俺は無意識に苦笑いを浮かべていた。


なんというか……蘭子にそんなことを言われると恥ずかしいな。


「えっと……そのつもりだけど。灯の気が変わらなかったらね」


ぼんやりと空を見上げて答えたけど、いつからそれが当たり前の感情になってしまったのだろう。


姉さんが死んで、灯に温もりを求めたから?


姉さんがいなくなったから、灯で手を打とうとしてるのか?


いや、そうじゃない。


物心ついた頃から、灯とはずっと一緒にいて……灯は俺の一部になっていたんだ。


灯がいるから俺は俺でいられる。


そんな風に思える人に、俺はずっと昔から出会えていたんだ。