蘭子がそう尋ねると、高山真治はフフッと笑って。


「魔刻に光の壁を越えることは出来ない。だが、俺なら少しの間、光の壁に穴を空けることが出来る。名鳥さんに頼まれて俺はここに来たんだ」


俺達に背を向けて、光の壁に向かって歩き出した。


「ま、光の壁を越えられるってんなら、それに越したことはねえ。両国から迂回するか、聖戦まで待つかの二択だったわけだしな」


タケさんも、これ幸いにと後に付いて歩き始める。


怪しいとか思わないのかな……と思ったけど、タケさんくらい強ければ、罠だろうがなんだろうが関係ないんだろうな。


無理矢理力でねじ伏せることも出来そうだし。


「クソ親父は何も考えてないんだから。でもま、魔刻なのに光の壁を越えられるならありがたいよね」


「蘭子もそう思う。何かあっても、蘭子が蹴散らすから大丈夫!」


皆の言う通りかもしれないな。


仮に俺達をハメようとしているにしても、これだけ強い人達が揃っていれば乗り越えられないはずがない。


高山真治を信じることは出来ないけど、皆を信じよう。


強く、そう思って俺は光の壁に向かって歩き出した。


ただ、灯に会いたい一心で。