「まあ、裏切り者がどうこうって話になってたからよ、最近は会わないようにしてたんだけどな。でも、俺の夢子への愛は変わってないぜ!」


杉村は変わってなくて何よりだ。


初めて会った時はそこそこ強かったのに、夢子とイチャイチャしすぎてあまりレベルが上がらなかったんだろうな。


「おお……愛。蘭子も宗司への愛は変わらない」


「はいはい。本当に蘭子は宗司が好きだよな。そこまで好きでいてくれたら、宗司もきっと幸せだよ」


でも、宗司はずっと灯のことが好きだったんだよな。


いつも三人で一緒にいて、何をするのも一緒で。


なのに、この街に来てからはバラバラに行動することが多い。


そんな中で蘭子は、宗司の支えになってくれているような気がして。


俺は、それが嬉しくて蘭子の頭を撫でた。


「どうした葵。蘭子をいい子いい子しても、何も出ないぞ。笑顔になるくらいだ」


そう言って、ニカッと笑って見せた蘭子。


この女の子が、あの鬼王・黒井の娘だとはとても思えない。


父親を助けたくて、たった一人で西軍までやって来たんだ。


そんなことを考えながら歩いていると……御徒町駅を右に見る交差点。


そこに、あの男が立っていたのだ。