宙を待っていた結城さんは、ビルの壁面を蹴って軽自動車の上に乗った。


何が何だかわからないまま、俺も軽自動車の上へと飛ぶと、蘭子が俺と結城さんの間に割り込んで来た。


「一体この上で何をしようって言うんだ?」


「そうか、葵は初めてだったか。俺は何となくわかる」


戸惑う俺に、これから何が起こるかを理解している様子の結城さん。


「心配しないで。蘭子がサポートする!」


地上にいた蘭子は、大和さんに聞いていたかもしれないけど……俺は何も聞いてないんだけど!


「よし! 言うた通りに頼むで! 敏腕秘書の希澄さん!」


「お任せ下さい! 長時間は無理でも、この一瞬くらいなら私だって!」


大和さんの声のあと、希澄がそう言って右手を俺達に向けると、軽自動車がふわりと空高く舞い上がった。


いきなり上昇を初め、大きく弧を描いて今度は急速に下降を始めた。


俺が爆破した場所へと一直線に。


「二人とも行くよ! 私のランスに掴まって!」


俺と結城さんに腕を回し、ランスを使ってホールドしている蘭子。


言われた通りにそのランスを掴むと、蘭子は空中で軽自動車を蹴り、更に下降速度を加速させたのだ。


そして途中で蘭子がランスを離した。