床を蹴った……と思った次の瞬間には、メリケンサックが左目の視界の殆どを奪っていた。


ヒュッと息を強く吐き、後退すると同時に日本刀の刃をメリケンサックに当て、下へと誘導するように振り下ろす。


バランスを崩すかと思ったけれど、タケさんはそこからさらに一歩踏み込んで、今度は下から斜めに振り上げるアッパーを放つ。


完全に身体が開いている状態からのこの攻撃。


日本刀で防ぐのは間に合わない!


素早くトンファーを、タケさんの左の拳の前に滑り込ませて上方に弾く。


が、その攻撃の威力が大きくて、俺の身体が宙に舞い、フィギュアスケートの選手のように高速で回転をしたのだ。


それでも何とか着地して、体勢を整えて顔を上げると……タケさんが両手を上下に、まるで獣の牙のような形で力を溜めていることがわかった。


「殺す気で行くぞ北条葵! 食らえ! 白虎咬牙撃(びゃっここうがげき)!」


そこから放たれる一撃。


見た目はただの正拳突きだが……右手に纏うオーラが、まるで虎の顔のように見える!


それほどまでに凄まじい力が、タケさんの拳に集まって放たれた!


速すぎて回避が間に合わない!


日本刀からトンファーに持ち替え、両腕で受け止めるように構えたが……とんでもない負荷が腕に加わり、トンファーは破壊されないものの、俺の腕がブチブチと音を立て始めた。