とりあえず話すだけ話して、まとめるのは結城さんに任せた。


「えっと、『ヴァルハラ』での話になるんですが、俺は悪魔と……自らを『ビショップ』と名乗る黒井と戦いました。その時に『ヴァルハラ』からこっちの世界に戻ったことがあるんですが……」


「ん? もしかして秋葉原に現れたっちゅう、あの黒い悪魔か? 当時、ニュースで一瞬だけ騒がれたな。CGとかコスプレとか言われとったけど……あれが黒井やったか」


大和さんの他には希澄が頷いていて、その事件のことを記憶している人もいるんだなと感心してしまった。


「ええ。どうやらその時にPBT……スマホ型のPBSを落として来たみたいで、それが『ヴァルハラ』の外でも残ってしまった。『ヴァルハラ』が終わった後に、この世界に戻った黒井は……PBTを回収して、再び『バベル』や『ヴァルハラ』を発現させる為に研究を始めたということだと思うんですが」


「……高山真治の絶望によってこの街が生まれた。黒井の欲望によってこの街が生まれた……か。願いの力と絶望……か」


結城さんの話を聞いて、タケさんが物思いにふけるように天井を見上げた。


人が死んだ時に飛び散る光。


あれが願いの力で、バベルの塔に集まっているような気さえする。