「わかってるよ、今日は母さんの命日だからな。宗司も茶化すなよ。灯がへそを曲げたら大変なんだからな」


「へいへい。ところで葵、面白い話があるんだけどよ。『両国の鬼』って知ってるか?」


この宗司、どこから仕入れてくるのか、色んな噂話を知っている。


この話も、いかにも胡散臭い噂話だけど、話を逸らすには丁度いいかもしれない。


「鬼って……両国ってあれか? 両国国技館がある? 灯、知ってるか?」


「し、知らないわよそんなの」


一応、灯にも話を振ってみたけれどやっぱり知らないみたいだ。


「ここ最近、両国付近で頭にツノが生えた化け物を見たって話があるんだよ。で、ツノがあるから鬼って呼ばれてるらしいんだよな」


ツノが生えた化け物ねぇ。


それにしても、ツノがあるだけで鬼と呼ばれるのも安直な気がするけどな。


「で、その鬼が一体何をするんだ? 人をさらったり、金銀財宝を奪ったりして鬼ヶ島に帰るのか?」


「葵……お前、バカにしてるだろ? 鬼が何をするかなんてのは俺も知らん。見たって話があるだけで、鬼が何かをしたって話は聞いてないからな。でも、この21世紀に鬼とか、逆に気になるだろ!」