てっきりどこかに逃げたと思ったのに、俺達の後をついてきてたのかよ。


「い、いや、ペットって……鬼ですよ?」


「鬼っつってもお前、ゾンビじゃないんだぜ? わかってんだろ? 光ちゃんも同じだろうがよ」


俺の心を見透かしたかのように言ったタケさんのその言葉は、俺を黙らせるには十分だった。


「へぇ。葵ってモテんだね。どう見てもあの人年上だけど、あんなのが良いんだ?」


「元は人間だからな。好かれてるなら食われないだろうから、セックスをさせてもらうのもいいんじゃないか? あ、夕蘭が相手をするから必要ないのか!」


「クソ親父、本当に最低なんだけど。娘の前でよくそんな話出来るよね。気持ち悪いが百周くらいして気持ち悪いわ」


……まあ、それは置いといて。


このままコソコソとついて来られたら、他の人に見られたら始末されるかもしれない。


かと言って追い払っても、また鬼の群れに戻るだけだろ?


あのバベルの塔の下にいるやつらみたいに、自分の意思なんてなくて、ひとつの意思で動いているみたいなやつらになるんだ。


「……連れて帰ってもいいですかね? 人間を襲わないなら、大丈夫な気がするんですけど」