「あー……マジでヤバかった。なんなのあのホームレス。本気でヤバいんだけどあれ」
落ち着きを取り戻した夕蘭が、俺の腕にしがみついてブツブツと呟きながら歩く。
隅田川までやって来ると、川の向こうには巨大な白い柱……バベルの塔が凄まじい存在感を放っていた。
「あれが旅の終着点……ってか? なるほどな、確かにそう思っちまうなこれは」
どれだけ見上げても、その天辺が見えることがない。
この街のどこにいても見えるバベルの塔に、一体何があるのはなんて……誰もわからないんだよな。
「うわぁ……見てよ塔の下。あの蠢いてるのって鬼じゃないの?」
夕蘭が指さしたバベルの塔の下。
そこには、大量の鬼達がいるのがここからでもわかった。
しかもそれだけじゃない。
塔の周りには空を飛ぶ鬼達もいて、人が近付くのを拒んでいるようにも見えた。
あの数の鬼を相手にするだけでも、相当な実力がなければ一瞬で飲まれてしまう。
なるほど、結城さんが今はまだその時じゃないって考えるはずだ。
「……満足したか? 確かにこの塔の上には何かあるって思っちまうよな。でも、あの場所に行くにはまだ実力が足りねぇ。お前も、俺もな」