「それじゃあ僕は家に帰りますね。親切にありがとうね、篠田さん」


またもフラフラと歩き始めた男性に、眉をひそめたのはタケさん。


「……ちょっと待て。テメェ、なんで俺の名前を知ってんだよ。ソウルウェポンを持ってないのにスキャンなんて出来るはずがねぇよな?」


確かに男性の影は真っ黒で、どこの軍の人間でもない。


タケさんの名前を知る術なんてないはずなのに。


敵意を剥き出しでタケさんがメリケンサックを装着したと同時に、ここから去ろうとしていた男性が外套から横に左手を伸ばした。


俺達に背を向けたままで……左手に握られたのは、豪華な装飾が施された日本刀!?


どこの軍にも所属していない、ソウルウェポンを持っていないはずの男性が、ソウルウェポンを取り出した。


しかも結城さんや俺と同じ日本刀だと!?


「まいったねこりゃ。親切な人とは殺り合いたくないんですがね。どうしてもと言うなら……降り掛かる火の粉を払う程度には相手しますがね」


鞘を握ったまま、親指で日本刀の鍔を押し上げて、面妖な雰囲気を放つ刃を見せる。


その瞬間、まるで全身を切り刻まれたかのような悪寒が走り、それに耐えられなかったのか、夕蘭がその場に崩れ落ちた。