そう考えると複雑だ。


普通の鬼は理性を失い、人を見れば襲い掛かってくる怪物になっているのに、友里は鬼に変わり切っていないのか。


言葉を発する鬼はそもそも個体数が少ないからよくわからない存在ではあるんだけど。


などと考えていると、頭上の方から一際激しい金属の音が聞こえて来た。


慌ててタケさんの方を見ると、電車の上からふわりと舞う人影。


空中でクルリと回転し、軽やかに線路の上に降り立つは遊鬼。


「想像以上にやるじゃないのさ。私以外全滅なんて、少し甘く見てたかもしれないね」


周囲を見回して、あれだけいた鬼がいなくなっているのを焦る様子もなく、むしろ呆れた様子でそう言って見せた。


「はぁ……はぁ……年寄りに激しいプレイは厳しいってことか。さすがに疲れるぜ」


「それでもあんた、そこいらの若者より全然魅力的だよ。さて、ここいらでそろそろ……」


クスクスと笑いながら、遊鬼がロングソードをタケさんに向けた時だった。


今まで笑っていた遊鬼の顔が突然引き攣り始め、ジリジリと後退りを始めたのだ。


「ひ、ひっ……わ、悪いけど、やっぱり逃げさせてもらうよ!」


それだけ言うと、遊鬼は隣のビルに飛び移って去って行った。