少し歩いて、浅草橋駅近くに電車が止まっているのが見えた。


この街が光の壁に囲まれた時に、動きを止めてしまったのだろう。


「なんか……ちょっと寂しい感じがするね。世界中にある廃墟もさ、最初はこんな風に日常の風景だったんだよね。それが、どんどん朽ちていってさ」


動かなくなった電車を見て、夕蘭は少しセンチメンタルになったのだろうか。


その感覚は、俺にはよくわからないけれど、姉さんを失って落ち込んでいた中で、こうしていつもとは違う場所に行けるというのは新鮮だった。


気分転換という点では、タケさんに感謝しないとと思っていたけど。


「豊かな感性を持ってるじゃねぇかよ。母親譲りか? まあ、そんなことはどうでもいいけどよ。お前ら構えろ。囲まれてんぞ」


そう言ってメリケンサックを取り出したタケさん。


俺も慌てて日本刀を取り出して辺りを見回すけれど……どこに敵がいるっていうんだ!?


「え? う、嘘でしょ!? ちょっと、驚かさないでよクソ親父!」


「目で見るな。気配を感じろ馬鹿野郎」


目を閉じて、何かを探るようにしていたタケさんが、突然電車の上を睨み付けた。