カラオケ店を出て、両国の方に向かって移動を開始した俺達。


真っ直ぐ道を歩いても行けるけど、比較的安全だという総武線の線路を歩くことになった。


秋葉原駅からだと二駅の距離で、全力で走ればすぐに到着するのに、タケさんはのんびりと歩くのだと言って聞かない。


「なんでわざわざ歩くわけ? 電車も車も動かなくなってるとか、マジで不便だよね」


そう言えば……電車も車も走ってるのを見たことがないな。


俺が運転免許を持ってないから、そんなに気にしたこともなかったけど、夕蘭の話だとこの街では使えないということか。


「物事には全て意味があんだよ。若いんだから殺し合いのことばかり考えずに、たまには自然を感じろってことだな。空を見やがれ」


腕を広げ、顔を上に向けて器用に線路の上を歩くタケさんは、どこか少年のようで。


父さんと同じくらいの年齢だとはとても思えないくらいに純真に思えた。


「空ねぇ……真っ白な柱が良く見えるねここは。一体どこまで伸びてるんだろ。宇宙から見たらどうなってんだろうね」


夕蘭の言う通り、俺達の進む先にはバベルの塔がそびえ立っていて、線路はそこに続いているようにも見える。


ここを行けば、あの塔に近付けるんだ。