随分手厳しい。


けど……的確な言葉だった。


「自分の弱さを……か」


身体を起こして天井を見上げる。


この街に来た時は誰よりも弱くて、震えながら戦っていたのに。


いつの間に、俺は強くなったつもりでいたんだろう。


「まず知ることから始めろ。この街の中心に建つ塔は何なのか。自分はこの街で何が出来るのか、何をすべきなのか。そして、自分は一体何者なのかってな。何も知らねぇのに、何かしようなんて無理な話だろ」


「そう……ですね。遠回りでも、少しずつ色んなことを知るしかないんですね。何が変わるかわからないけど、一度近くで見てみようかな。『バベルの塔』を」


ゆっくりと立ち上がって、タケさんのデコピンを食らった額に手を当てる。


とてつもなく痛くて、骨が砕けたかと思ったけど無事なようだ。


「んじゃあ、俺も何が変わるかわかんねぇけど、いっちょ両国まで行ってみっか。俺も知っておきたいからよ。その『バベルの塔』ってやつを」


ニヤリと笑って俺の肩を叩いたタケさん。


え?


いや、タケさんが来てくれるのは心強いんだけど……まさかこんな流れになるなんて思わなかった。


「嘘でしょ……クソ親父が一緒とか、ありえないんだけど」


「何言ってやがる。街の中心に行けば行くほど、人間より鬼が多くなるんだからよ、お前らだけ行かせるわけにはいかねぇだろ」