「どうだ。感じたか? これが今のお前の実力だ」


天井を見上げて仰向けに倒れる俺の足元で、タバコに火を点けて煙を吸うタケさん。


俺の攻撃の全てが、かすりもせずに全部避けられて、しかもタケさんのデコピン一発でノックダウンなんて……笑えないな。


拳を食らわせるまでもなかったってわけだ。


「ま、そんな迷いだらけの攻撃を食らうバカはいねぇ。本当にそんな強さで行くつもりかよ。お前、殺されるぞ」


「やっぱり……そうですかね。甘いですかね」


ここまで一方的に力の差を見せ付けられたら、逆にスッキリするよ。


「別に良いんじゃねぇか? 強いやつとの戦いを避けていれば、それなりに生き残ることは出来る。弱いなら弱いなりの戦い方があんだよ。それにはまず、テメェが自分の弱さを理解しろ」


俺の顔の横で屈んで、覗き込むように見たタケさん。


自分の弱さを……理解する。


「テメェは心のどこかで、自分はめちゃくちゃ強いんじゃないか。勝てなくても運が悪かっただけだ、相手の運が良かっただけだ……なんて思ってんだろ? そんなの全部捨てちまえ。真っ白な気持ちでもう一度最初から始めろ」