「つまり……そういう力が『バベルの塔』にはあるってことですね」


「わからねぇって言っただろ。名鳥や昴に聞けばわかるだろうが、今のこの街は、お前程度が大手を振って歩けるほどヤワじゃねぇ。構えろ」


胸の前で拳を握り、足元のグラスを俺に向かって蹴り上げたタケさん。


上手い具合に、中身はグラスの中に入ったままで、俺とタケさんの丁度中間辺りで酒が飛び散り始めた。


「その身に教えてやるよ! これが世界最強の拳だ!」


その瞬間、ステージ上にいるタケさんが、グラスに向かって拳を突いたかと思うと、そこから凄まじいエネルギーのような物が放たれて。


空中で、グラスも酒も粉砕されて、キラキラとした粉が宙に舞ったのだ。


その衝撃は扉をも吹っ飛ばし、不自然にひしゃげて廊下に倒れた。


「な、何言ってるんだよ! なんで葵が戦わなきゃならないわけ!? 本当に意味わかんない!」


「うるせえバカ娘。お前はこのまま葵を行かせて、死なせるつもりかよ。経験だ経験」


正直、あの日、父さんとタケさんの戦いを見て、目で捉えることは出来た。


身体がついて行かないと思ったけど、その後強くなって何とか戦えるようになったんだ。


「やります。俺の力がどこまで通用するのか、確かめてみたい」


だから俺は、日本刀を抜いてタケさんに刃を向けた。