姉さんに似てる。


人として生きられずに、鬼にもなれずに死んでしまった姉さん。


「いや、意味わかんないんだけど。お母さんが金とか、あんた頭おかしいんじゃないの?」


「ま、待って夕蘭。それで、タケさんはどうしたんですか? 夕蘭のお母さんを」


夕蘭の前に割って入り、タケさんに視線を向けた。


その口から飛び出すのが、希望か絶望かはわからない。


でも、全ての出来事が今に繋がっているのだとしたら、それは希望だと信じたい。


「守ったさ。あいつが一人にならないように、俺がずっと一緒にいてやった。そんな時にお前みたいな何もわかってねぇガキが現れやがったんだ。俺の想いを託したガキ……結城昴がよ」


結城さんの名前を聞いても、それほど驚きはなかった。


きっと、心のどこかでこの人は何か特別な物があると感じていたからかもしれない。


「結城さんは、『バベルの塔』に行ったんですね? 父さんと会った時、タケさんはそれを見ていたんですよね」


「さあな。俺は死んじまったし、詳しい話はわからねぇ。だけど俺はこうして生きている。つまり、どういうことかわかるよな?」


そう言いながらタケさんは、両手にメリケンサックを装着した。