「ちょっとクソ親父! 葵は真剣に聞いてるんだよ! 説明くらいしてやっても良いだろ!」


「うるせえガキだな。娘じゃなかったらぶっ殺してるところだぜ」


「おーおー、やれるもんならやってみな!」


今にも親子喧嘩が始まってしまいそうな雰囲気だけど、そんなことをしに来たわけじゃないのに。


「……場所を変えるか。ついてこい」


グラスを持ち、エレベーターに乗ったタケさん。


俺と夕蘭もそれに続いて乗って、七階へと向かった。


チビチビと酒を口に含んで、怒っているような雰囲気ではない。


七階に到着して、タケさんが先に降りると俺達はその後に続く。


廊下を歩き、大きな両開きの扉を抜けると……そこはライブハウス。


「何年前だったか……ここにお前の母親がいた。葵は見たからわかるだろ。金ピカのキングをよ」


「え? はい」


俺が答えている間にも、タケさんはフラフラした足取りでステージを上がった。


「ここに! お前の母親は! 西軍のキングとして金の置き物になってたんだよ! わかるか!? 人間として生きることを許されなかったんだよ!」


足元にグラスを置いて、両手を広げたタケさんが叫んだ。