エレベーターの扉が開くと、南国風の内装の店。


そしてカウンターにはタケさんが頬杖を突いて、酒を飲んでいた。


「クソ親父! また真っ昼間からお酒なんか飲みやがって!」


夕蘭がそれを見るなり怒鳴ると、タケさんは不機嫌そうな顔でこちらを睨み付けた。


「別に良いだろうがよ。それよりも……葵。やっとお目覚めかよ。良い夢見れたか?」


「あ、いえ……」


「だろうな」


俯く俺に、何の遠慮もなくそう吐き捨てて酒を飲み干した。


悲しみに沈んでいたとはいえ、俺の行動はただの現実逃避。


戦い続けていた父さんと比べたら、天と地ほどの差がある。


「んで? わざわざ俺に文句を言いに来たわけじゃねぇだろ?」


「あ、えっと……教えてください。『バベル』と『ヴァルハラ』ってなんなんですか? タケさんは『ヴァルハラ』なんですよね」


新しい酒を注文したタケさんの指がピタリと止まる。


触れられたくないのか、それとも何か別の感情があるのか。


「だから何だってんだ。俺が『ヴァルハラ』だろうとへべれけだろうと、何も変わらねえだろ」


目の前に置かれた酒を取り、少し口に含んで椅子から立ち上がった。