ロビーにいる人達を次々とスキャンし始めた大和さんの横で、夕蘭が思い出したかのように声を上げた。


「あ、ちょっと待って。クソ親父が確か『ヴァルハラ』だった気がする。名前の上に、小さく書いてあったよ」


タケさんが「ヴァルハラ」か。


正直、その言葉が何を意味しているのかわからないし、それがあったらどうなのかということもわかっていない。


「バベル」と「ヴァルハラ」にどんな違いがあるのだろうか。


「……待てよ? もしかしたら吹雪さんは『バベル』なのかもしれないな。夢の中で母さんと一緒にいたから」


「吹雪……って誰や。それにしても夢かいな。不確実極まりない情報やの」


「確かめてみる価値はあると思います。えっと……16時か。次の聖戦で北軍に行きます。吹雪さんに話を聞きに」


時計を見ながらそう言うと、大和さんも夕蘭も、缶ビールを飲んでいる浜瀬さんでさえも言いにくそうに顔をしかめた。


「ほ、北条。言いにくいんやが。気を悪くせんと聞いてくれや。今、北軍に行くのはやめた方がええと思う。あの日から、何もかもが変わってしもたんや。散歩感覚で他軍に行けるほど、もう甘くはないで。まず、つよさランキングを確認してみ」


ずっと落ち込んで眠り続けていた俺には、今の状況がわからない。


大和さんに言われるままに、PBSを開いてつよさランキングを出した。