「ま、まずい!」


既に壊滅状態になって、ようやく身体が動くようになった。


慌てて日本刀を構えた時には俺一人になっていて、どうしてもっと早く動けなかったんだと後悔が押し寄せる。


「……北条葵。似てる。大好きなお兄ちゃんに。でも、違う」


PBSを開いて俺をスキャンしたのだろう。


俺も、女性の動きに集中しながら、スキャンを開始した。


「大好きなお兄ちゃんに似てるなら、見逃してほしいもんだね。杉下舞桜(すぎしたまお)


巨大な刀は「野太刀」。


肩に担ぐほど巨大なのに、それを悠々と振り回すこの女性の強さが、それだけでもわかる。


「だって、お兄ちゃんじゃないでしょ? だから無理。私はお兄ちゃんに会いたくて、ここでずっと待ってるの。だからもう……死んでいいよ」


トントンと、その場で軽く2回ジャンプした舞桜。


次の瞬間、俺に向けて突き付けた野太刀の切っ先が右目を貫こうと、まつ毛に触れる位置まで迫っていたのだ。


速すぎる!


動きを捉えられても、身体がついて行かない!


それでも、死にたくなかったら限界を超えて身体を動かせ!


最小の動きで回避しなければ、右目を持って行かれる!