俺の予想通り、杉村は善吉医院のドアを叩いて、中から出てきた吹雪さんに夢子さんを保護してくれるように頼み込んだ。


姉さんのこともあるから断られると思ったけど、あっさりとOKをもらって。


「また会いに来るぜ夢子。それまで頑張って生きるんだぜ」


「はい、泰成さん……」


まるで世界が異なっているかのような雰囲気に、吹雪さんも呆れた様子。


名残惜しそうに夢子さんに手を振り続けて、やっと元に戻ったのは上野駅近くまで戻った時だった。


「よぉよぉ、杉村さんよぉ。勝手な行動するなとか説教したくせに、自分はなんなんだよ。あんなの俺は納得しないよ?」


殴られたことを根に持っているのか、宗司が杉村をチクリと責める。


「ぐっ! ブザーの分際で! 悪かったよ! でも、あんな可愛い子を放ってはおけねぇだろ! 惚れた女の為になにかしてやりてぇって思うのは当然だろうがよ!」


くだらない言い訳を並べるかと思ったら、意外と素直に認めちゃったよ。


「チームワークを乱す個人プレイはやめてほしいぜまったく!」


「ぐぬぬ……」


ここぞとばかりに杉村を責める宗司。


だけど、そんなやり取りをしているこの場所が北軍だというのを忘れてはいけなかった。