「へえ、井ノ原夢子(いのはらゆめこ)ちゃんって言うんだ。俺は杉村泰成。まさか北軍にこんなに可愛い子がいるなんて思わなかったな。キミを敵とは言いたくないよ」


「あ、ありがとうございます泰成さん。私も……西軍の人にこんなに優しくされたのは初めてです。美奈ちゃんが生きててくれたら……もっと良かったんですけど」


「こいつは申し訳ないことをしたね。もう少し俺の到着が早ければ助けられたものを……だけど、キミだけでも助けられて良かった」


真っ先に助けに向かったのは俺と宗司だっていうのに、良いところを全部杉村に持って行かれたような気がする。


そんな話をしながら歩く二人を見ながら、俺達三人は歩いていた。


「ねえねえ、杉村さんは夢子ちゃんに惚れちゃったのかな? 私達と全然態度が違うよねぇ」


「見りゃわかるっしょ。気持ち悪いったらないぜ。見捨てろって言ったのは誰だよ」


ひなたさんはこの恋の行方が気になっているようだけど、俺と宗司にしてみればどうだっていい。


それにこの道……夢子さんを連れて行こうとしてるのって、善吉医院だろ。


父さんに面倒を見てもらおうとしてるのかよ。