「よく、まんざらじゃないとか思えるね……」と半ば呆れての言葉に、黒田は自慢そうに口を開く。

「まぁなー。だって周りからの評価で自分の立ち位置ってわかるじゃん。俺、学生時代からモテてきたしさ。今は医療機器メーカーで働いてるんだけど、成績も悪くないし見た目も平均以上だから、よく社内の女の子に誘われたりしてるんだよ。オフィスラブってやつ?」

黒田が学生時代モテていたのは事実だ。
顔立ちも整っていて性格がフランクで、ちょっと声をかけたら簡単に遊んでもらえる黒田の人気は凄まじかった。

たぶん、黒田が遊び歩いてばかりだったから、余計に女の子たちの恋心が燃えたんだと思う。
付き合っては別れてを短期間に繰り返していた黒田に、〝私こそのめり込ませてみせる!〟という考えが働いても不思議ではなかった。

強奪戦は、ライバルが多いほど燃えるものなのかもしれない。
とはいえ、私は黒田のどこもかしこも嫌いなので、人気がどうだろうと関係ない。

「それだけモテるなら、私に構わなくてもいいでしょ。もう本当に迷惑でしかないし、もちろん付き合う気もないから、今後、私を見かけることがあっても声かけてこないで」

ハッキリと言い切り背中を向けようとしたとき、「待てって」と黒田が私の腕を掴む。いい加減しつこすぎて声を荒げそうになったとき。

「――相沢さん」

知っている声が割り込んできた。