秋は、最初からずっと優しい人だった。



知り合いのいない他県の高校から来て、大学のサークルで同学年の子と馴染めずにいた私を、気づいて、輪に入れてくれたのが秋だった。



一緒のサークルから、同学年、そして二人で遊ぶようになって行って、気づいたら好きになっていた。



でも、秋はカッコいいから、いろんな女の子に言い寄られてて、だから私はきっと、秋とは付き合えないだろうって諦めてた時、秋の方から「付き合おう」って言ってくれた。





いろんなところに連れてってくれた。


不安にさせないように、女の子のいる遊びにはほとんど行かないようになった。


たまにある男友達との飲み会も、私に行っていいか尋ねてくるくらい、秋は私のことを大切にしてくれていた。




今日の高校の部活の集まりも、最初は断ろうとしてたのを、私が「行きなよ」って言ったの。



秋がすごく今日の集まりを楽しみにしてたのを知っていたし、だから


「20時までには帰るから二人でクリスマスしよう」


って言ってくれたのもすごく嬉しかった。




最近は些細な喧嘩が増えていたから、今日は楽しく過ごそうって朝は、そう決めてたのに。






「……………私の馬鹿野郎」






秋から遅くなるって連絡が来て、寂しくなって。


ケーキも買ってきてないって知って、悔しくなって。



それまで秋にたくさんたくさん優しくしてもらったのに、たったそれだけのことで怒ってしまった。




寂しさも、悔しさも、嘘じゃない。


でも、そのどれもが、秋と別れたい理由になんてならないのに。





秋の優しさに甘えて、秋に優しくできなくなって、最低じゃん……。





涙でぼやける視界の中、秋にメッセージを打ち込む。



「ごめんなさい」



心からの言葉を、秋は受け取ってくれるかな。



不安でいっぱいになりながら、送信ボタンを押した。