〜龍side〜

笑恋が涙ぐんだ声で電話をしてきた。
俺は慌てて駿を探す。

駿の家のインターホンを押す。
ピンポーン。
どれだけ待っても応答はない。

15年間ずっと一緒だったんだぜ?
お別れもなしかよ。
俺は元々口数が少なくて、友達を作ることが苦手だった。
でも駿はそんな俺をいつもサポートしてくれて、みんなの輪の中に入れてくれた。
駿…………。


あ、小さい頃よく遊んだ河川敷。
よくあそこで駿と野球したなぁ……
駿は昔、悲しいことがあるとあそこに行ってた。
俺は思い出して全速力で走る。


河川敷は静かで誰もいない。

龍「やっぱ、いなかったか……」

駿「龍??」

後ろを振り向くと駿がいた。

龍「駿?」

そこにいた駿は俺の知ってる駿じゃなかった。
髪はきちんと整えられ、高そうな白のスーツに身を包む。

駿「東京の親戚のところに行くことになったんだ。今までありがとう。」

そう言って立ち去ろうとする駿を呼び止める。

龍「待ってくれ。笑恋が最後に会いたいって駿の事真剣に探してるんだ。」

駿「会わないよ。」

龍「え、なんで?」

駿「俺、昨日笑恋に振られたんだ。だから俺は東京でいい男になってから笑恋の全てを手に入れる。」

龍「全てってどういうことだよ。」

駿「言葉の通りだよ。俺は自分の手に入れたいと思ったものは全部手に入れる。」

そう言って駿は今まで俺が見た事もない不気味な顔で笑う。

駿「いま俺の事怖いって思った?俺は昔からそうだよ。お前のことが邪魔で邪魔で仕方なかった。笑恋の3人って言う言葉がどれだけ嫌だったことか。俺はお前に負けない。笑恋は俺のものだ。」



そう言って俺のほうをギッと睨むと、
道に停められた高そうな外車に乗り、駿はどこかへ行ってしまった。