「大丈夫?怪我は?」
「…大丈夫」
「ふらふらじゃん。…お前ちゃんと寝てる?」
男達が去って行くとすぐに私を立たせてくれた。
早くバイトに行かなきゃ。
今日は確か予約が入っていたんだっけ。
「平気だよ。ちょっと忙しいだけで…ありがと、おにーちゃん」
「…柚。お前、顔赤くない?」
「っ…」
ひんやりした手が頬に触れた。
ふわっと久しぶりの匂い、掌の柔らかさ。
顔が赤いのはきっとあなたのせいだよ……なんて言えない。
「だいじょーぶなのっ!じゃあ私バイトあるからっ!!」
逃げるように離れた。
せっかくこの気持ちが少しずつ中和されてきたと思ったのに、どうして戻すようなことをするの。
平気で触れてくるし…。
それが妹としか見られていない辛さを抉ってくるみたいで嫌だ。
「真崎ちゃん、飲み物追加ね」
いやそういう廣瀬さんも従業員側のはずじゃないんですか。
なにを当たり前のようにテーブルに座って大学生集団に混ざってるの。
予約客は集団って程じゃないけど、廣瀬さんを入れて4人だった。
…前に電話してた友達なんだろう、きっと。