「返してっ!それは大切なお金なんです…!」
「うるせぇよ。お前から絡んで来たんだろーが」
「わっ…!」
ドンッと押されれば、よろけた身体は地面に倒される。
リュックを漁るだけ漁られて、教科書やらノートやらが落とされた。
「あぁ、こいつあれじゃね?羽柴の妹だろ」
「マジか。おい大丈夫か?見つかったら───」
「もう見つかってるけど?」
バッと男達は一斉に振り返った。
久しぶりにこうして彼から声をかけてきたと思えば、聞いたこと無いくらいに低い声。
……いや、1度だけある。
あのときと同じだ。
羽川さんに襲われそうになったときと。
「お兄ちゃん…」
そう呼ぶのも久しぶりだ。
一瞬私を見つめて、少しだけ目を細めた。
けれどすぐに戻して私の前に立つ。
「お金、返してくれるかな」
「チッ」
目の前に1万円が投げられた。
それをキャッチした彼は男の胸ぐらを容赦なく掴む。
「おいおい、生徒会長がこんなことしていいのかよ」
「俺とお前の言い分、教師はどっちを信じると思う?」
ギリッ。
その力は止まらない。
男子生徒は危機感を感じたのか、「悪かったよ」と謝り出した。