「もう大丈夫」



そう伝えて神風くんが納得した表情を浮かべたのは、わたしの家に着いてから。


それまで何度もここまでで大丈夫だと言ったのに、「見送る」の一点張りで結局ここまで来てしまった。


神風くんに家まで送ってもらったのはこれで2回目。


女の子とでさえ一緒に帰ったことなんて数える程度しか覚えていないのに、ましてや男の子と一緒になんて。


慣れないことにまだドキドキしている。



「姉ちゃんには言っとくからゆっくり休んで。 じゃあ」



自分のやるべきことはやり終えたと言わんばかりに、背中を向けて去っていく神風くん。


本当に素っ気ない。


わざわざ遠回りをして家に帰るなんて面倒くさい。


そんな気持ちもだだ漏れで不機嫌さ満載だけれど、ここまで送り届けてくれたことは紛れもない事実。


お礼、ちゃんと言わなくちゃ。



「ありがとう!」



今も遠ざかっていく神風くんに届くように。


久しぶりにこんな大きな声を出した思う。


神風くんは振り向くことはなかったものの、ひらっと右手を上げて返してくれた。