「立てる?」



スっとベンチから立ち上がった神風くんがわたしを見下ろして言う。



「あ、うん……わっ」



神風くんに続いてわたしも立ち上がる。


その拍子にバランスを崩してふらついたわたしの体を神風くんが腕を引いて支えてくれた。



「……ったく、大丈夫かよ」


「だ、だ、大丈夫だからっ!」



時折見せる神風くんの優しさは反則だ。


わたしの中の心が揺れる。


これがなんなのか、今のわたしには理解できないけれど。


わたしがちゃんと立てることを確認してから、神風くんはゆっくり歩き始めた。


向かう先はテーマパークの出入口。


舞さんに電話で宣言した通り、わたしたちはテーマパークを後にしてしまった。


ここから家に帰るためには電車を乗り継いで帰らなければいけない。


乗り継ぐ電車は全て神風くんと一緒で、降りる駅も一緒。


だから常に隣には神風くんがいる。


道端でも駅でも電車の中でもやっぱりイケメンの神風くんは目立つわけで、視線を感じて居心地が悪かった。