舞さんに"絶対勝手に帰らないように!"と釘付けされたわたしと神風くんは、舞さんカップルの後ろをトボトボと歩く。



「またまわりに流されてるじゃん」



朝からずっと不機嫌な神風くんは、ズボンのポケットに手を入れたままわたしにそう言った。


釘付けをされた上に、あんな楽しそうな舞さんの笑顔を見てしまったら断れるわけがない。



「……そう言う神風くんだって嫌なのに来てるじゃん」



神風くんも例外じゃない。


あからさまに嫌だというオーラが全面に漂っているのに、断らずに来ているんだから。



「それとこれとは別。ノロノロ歩いてたら置いてくよ」


「ちょっと待ってよっ……!」



神風くんと一緒に歩くなんて落ち着かなくて離れたいけれど、この広いテーマパーク内を1人で歩いて、迷子になる方が辛い。



「もう澪ちゃんも唯斗も遅い! ほら、最初はあれ乗るよ!」



乗り物の入口前で口をとがらせながら舞さんと彼氏さんが待っていた。


せっかくのデートだし、2人きりの方がいいんじゃないかと思っていたけれど、ダブルデートが夢だった舞さんにとっては不服らしい。


そんな舞さんたちの元にたどり着いて乗り物を見上げて、わたしは血の気がサーっと引いた。