神風くんは簡単に諦めて帰るような人じゃない。
ずーっとわたしの3歩後ろをついてくる。
その間もわたしに話しかけてくる神風くん。
「もっと素直になれば澪も可愛いのに」
それは本心?
それともからかってる?
どちらにせよ余計なお世話だ。
わたしが嫌がっているのを神風くんはわからないんだろうか。
気づけば同じ電車に乗って、隣の席に座っている。
神風くんは学校でさえ目立つ存在なのに、電車の中で目立たないはずがない。
いろいろな人からわたしの隣へと視線が注がれる。
そしてその隣のわたしへと視線がズレるのだ。
あの人はこのイケメンのなんなのかと。
普通にただ隣に座っているだけなら他人のフリもできるのに、神風くんは未だにわたしに声をかけてくる。
だからわたしも注目されてしまう。
でも、みんな揃って「あんな地味な子が彼女なわけないじゃん」と口を揃えて言う。
小声で話しているんだろうけど、密閉された狭いシーンとした電車の中では、そんな声も丸聞こえ。
「また澪の話されてるよ?」
なんて神風くんにはまたからかわれ、笑われる始末。
あぁ、せめて早く目的地に着いて欲しい。