「でもなー、そのワンピース着るならその髪どうにかした方がいいんじゃない?すっごく似合ってない」


「……余計なお世話なんだけど」



本当、ムカつく。


なんでそういうことしか言わないの?


わたしだってわかってるよ。


このストレートすぎる長い髪もゆるーく巻いた方が可愛いし、玲奈ちゃんみたいに髪をまとめた方がスッキリするに決まってる。



「せめてその前髪を留めるとか」


「……っ」



周りの人からの視線があまり入ってこないように……そう思って長めにしている前髪。


そんなわたしの前髪にサラッと神風くんの指が触れる。


その時にたまたま当たってしまっただけだけど、ほんの一瞬だけ神風くんの指に触れたおでこが熱を持つ。



「え、なんで赤くなってんの?」


「う、うるさいっ! もう1人で行くからついてこないで!」



顔が赤くなってしまっていたことに、神風くんの指摘を受けて気がつく。


男の子に触れられるとかそんな経験、わたしにはない。


せいぜい幼稚園の時とか隣を歩く男の子と手を繋いで列になって散歩をしたくらい。


それなのに、あんな顔を近づけて例え前髪だとしても触れてくるなんて……


今の自分の顔を見られたくなくて、俯いたまま神風くんを避けるように早歩きで駅へと向かった。