「わたしのことなんて、神風くんがわかるわけないじゃん」
わたしがどんな思いでいるのか。
なんでもできちゃう神風くんには絶対わからない。
「わかんねぇよ。自分の意見があんのに言わないで嘘ついて……そういう奴見てると俺、ムカつくんだよね」
神風くんが言うことは、いちいちわたしの心に鋭いトゲを向けて突き刺さってくる。
こんなに酷いこと言われてるんだから怒ればいいのに。
どこか妙に納得してしまっている自分もいる。
何も返せない自分が嫌になる。
「まぁ、いいや。明日、学校に10時待ち合わせな」
「……えっ?」
「約束破ったら覚えててねー」
すごく軽い調子でそんな約束を取り付けて、わたしの返事も聞かずに行ってしまった。
神風くんはいつもそう。
わたしにいろいろ言うくせに、せっかく返事をしようと思ってもそんな機会さえ与えない。
……別に、行くなんて言ってないしいいよね。
神風くんが何を考えているのかわからない。
この日はずっとモヤモヤしたまま家に帰ることになった。